ガマ腫についてガマ腫について

手術せず「薬で治すガマ腫」

ガマ腫ってどんな病気?

ガマ腫とは、舌の下側にある唾液を作る工場(舌下腺)から唾液が正常に流出できなくなり、唾液が溜まって腫れる病気です。口の底の部分(口底部)が腫れる舌下型(写真1)が多いですが、顎の下の部分が腫れる顎下)もあります。ガマガエルがのどを膨らませた様に見えることからガマ腫という名前が付けられていますが、粘液貯留嚢胞と呼ばれることもあります。何らかの機械的刺激(歯ブラシで傷つけたとか)が原因で唾液の出口が封鎖され、唾液が出せなくなって溜まることにより出来ることが多いと考えられています。痛みを伴うことはほとんどありませんが、舌下型の場合は大きくなると、食事の時に気になったり、発音がしにくくなったりします。顎下型の場合は、こぶのようなものが出来て見た目が悪くなります。

※写真1
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※写真2
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一般的に検査や診断はどの様にするの?

舌下型は見た目(視診)とお話しを伺うことでほぼ確定診断できます。顎下型も同様ですが、注射針を刺してみて、黄色い粘液が吸引できたら間違えなくガマ腫と診断できます。わかりにくい場合や広がりを診る必要がある場合は、MRIを撮影して診断することもあります(当院にはMRIが無いため、必要な場合は、撮影専門のクリニックや病院などで撮影してもらうことが出来ます)。(写真3)

※写真3
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一般的な治療方法

ガマ腫は嚢胞といっても、袋の部分がとても薄く、また、近くに重要な神経や血管が走行しており、摘出することが困難です。そのため一般的に行われているのは開窓という手術です。これはつばが溜まらないように袋を破って開いてしまう手術です。局所麻酔で出来る簡単な手術ですが、術後に痛みを伴うことが多いことと、再発することが多いのが欠点です(再発率は50%以上と報告されています)。また、舌下型ガマ腫に対して開窓術を行われた患者さんにおいて、顎下型ガマ腫に移行してしまっているケースが何例も確認されており、お勧め出来ない手術と思います。元々の舌下腺を摘出してしまう手術は、理論上、再発することもない根治術となりますが、全身麻酔下での手術となってしまうこともあり、あまり行われていません。

当院での治療方法 ~薬を使った治療を行っています~

当院では、ガマ腫に対してOK-432(ピシバニール®)を使った局所注入療法を行っております。OK-432はもともと抗がん剤として作られた薬ですが、抗がん剤と言っても、がん細胞を直接たたくような薬ではなく、免疫療法として用いられる薬です(ですから抗がん剤としてはあまり使われていません)。中身はある細菌(溶血性レンサ球菌)をペニシリンで増殖できないように無毒化した製剤で、日本で開発され、すでに半世紀近く使われています。重篤な副作用はほとんどありません。元々が細菌のため、投与された部位に強い炎症を起こします。ガマ腫の中に注入しますと、炎症により唾液の吸収が促進されると共に、漏れ出ているところがふさがれるようになり、結果として病巣が縮小・消失して行きます。舌下型の場合、麻酔もせずに直接注入できます。顎下型は皮膚に針が刺さるときに痛みがあるため、局所麻酔を行います。小さなお子様でも簡単に行うことが出来ますが、ペニシリンを用いているため、ペニシリンアレルギーのある方には使用することが出来ません。当院でこの治療方法を担当している西原(日本口腔外科学会専門医・指導医)は、ガマ腫に対するOK-432局所注入療法において、全国でもトップクラスの治療数を行っており、治療を受けるため関東各地から患者さんが来院しています。一回の投与で治癒することも多いですが、潰れたりすると効果が得られないため、複数回、投与を必要とすることもあります(平均すると舌下型で1.7回、顎下型で2.0回の投与回数)。口唇の粘液嚢胞についても、大きなものについてはOK-432局所注入療法を行っています。
なお、この治療方法は歯科では保険適応が受けられないため、初回治療時に1万円、2回目以降は5千円の自費診療となります。

当院口腔外科担当:西原昇医師によるガマ腫関連の論文について

OK-432嚢胞内注入療法による口腔領域嚢胞性疾患の治療
西原 昇1),2),熊坂 士2),宇田川源2),安藤智博2)
OK-432 injection therapy for oral and maxillofacial cysts.
NISHIHARA Noboru1,2), KUMASAKA Akira2), UDAGAWA Gen2),  ANDO Tomohiro2)
1)医療法人社団成和会西新井病院口腔外科(主任:西原 昇部長)
2)東京女子医科大学医学部歯科口腔外科学教室(主任:安藤智博教授)
1)Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Nishiarai Hospital (Cheaf:Dr. NISHIHARA Noboru)
2)Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Tokyo Women’s Medical University, School of Medicine(Cheaf:Prof. ANDO Tomohiro)

和文抄録
【緒言】ガマ腫などの嚢胞性疾患に対してOK-432を嚢胞内注入する治療法は有効性が報告されているが、未だ実施している施設は少ない。今回われわれは、頭頸部領域の嚢胞性疾患に対しOK-432の嚢胞内注入療法を行い、良好な結果が得られたので報告する。【対象】西新井病院口腔外科において、2005年1月から2014年3月までにOK-432による嚢胞内注入療法を行った50例.【方法】(1)希釈液置換法:嚢胞内容物を可及的に吸引し、吸引量と同量に希釈したOK-432を注入する方法(2)高濃度注入法:嚢胞内容物の吸引は行わず高濃度に調整したOK-432を注入する方法(3)吸引注入法:嚢胞内容物を可及的に吸引し、2~4 mlの生理的食塩水で溶解したOK-432を注入する方法【結果】50例中47例(94%)が有効であった。重篤な副作用は認められなかった。【結論】OK-432嚢胞内注入療法は安全に外来通院で施行可能な治療法であることが確認された。

写真2 舌下型ガマ腫の治療経過(症例2:7歳女児)
 A:治療前(12x7mmの舌下型ガマ腫)
 B:術翌日(やや腫脹を認めるのみ)
 C:術4週間後(嚢胞は消失している)

写真A
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写真B
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写真C
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